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ツイン・ピークス生活 44日目 『The Return 第13章』チェリーパイに見る芸術と商業主義の葛藤

ツイン・ピークス生活 44日目

The Return 第13章 物語って何よ

〈ネタバレを含みます〉

 

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今日はいきなりギャングだらけの腕相撲大会から始まる

レイの裏切りによって腹に一発弾丸を喰らった悪クーパー。死んだかと思いきや、何事もなかったかのように蘇生。レイの隠れ場所へ堂々とやってきた。その隠れ場所はギャングの巣窟のようなコンクリート打ちっぱなしの建物。その場にそぐわない巨大モニターがある変な場所だ。

一人入ってきた悪クーパーをレイとギャング仲間たちは待ち構える。

 

そこで早速、悪クーパーは洗礼を受ける

このギャング団は腕っぷしの強いものが頭を張れる。つまり、腕相撲が強ければその集団の長になれるのだ。そこで14年間頭を張り続けている、いかにも強そうな長身で体格のいい男。彼に勝てばそのギャング団の頭になれる。

悪クーパーとしてはチームの頭はどうでもいいので、勝ったらレイの身柄受け渡しを要求する。

 

さあ、腕相撲対決の勝敗やいかに!!!

 

対決は予想通りの展開を迎え、悪クーパーはレイに尋問を始める(大事なのはここから)

 

悪クーパーはまず誰に殺すよう指示されたかを問う

その答えは、フィリップ・ジェフリーズだった

 

直接は会ったことはないが、電話で指示を受けたという。劇中で何度か挿入されるブエノスアイレスの電話、その向こう側にいるのがジェフリーズなのかもしれない

ジェフリーズは悪クーパーが握っているなんらかの情報を狙っているらしい

そしてもう一つ、レイは渡されていたものがあった。例の緑色の石のついた指輪だ。現実と異世界を繋ぐキーアイテムだ。以前見かけた時は赤い部屋に召喚されたダギーが持っていたはず。この指輪を悪クーパーの死体の薬指にはめろと指示されていたらしい。やはりこの指輪が異世界へ魂を送還するアイテムなのかもしれない

悪クーパーはずっと求めていた座標のメモをレイから受け取り、ジェフリーズの居場所を聞き出す。その答えは「ダッチマン」という店だった。

 

悪クーパーも座標を手にした。これはFBIチームが手に入れた座標と同じはずなので、悪クーパーもツイン・ピークスへと向かうはずだ。それとも、まずかつての上司フィリップ・ジェフリーズに会いに行くのか…?

腕相撲ギャング団にはたまたま転がり込んでいたリチャード・ホーンもいた。彼もこの悪クーパーと行動を共にすることになるかもしれない。

 

ラスベガスの善クーパー/ダギー以外のパートはツイン・ピークスへと物語が集まってきている。この善クーパーのパートだけがどうなっていくのかさっぱり見当がつかない。

ただこの善クーパーはまさに善なる存在で、彼と接することで周囲の人たちに善の心が芽生えていくらしい。

 

この『ツイン・ピークス』ではホワイト・ロッジとブラック・ロッジのような善と悪の二項対立が語られ続けている。だが描かれるのはその対立の中にいて、どちらにも振り切れない、あるいはどちらにも振り切れてしまうものとして描かれている。その善と悪を併せ持った人間の象徴としてリーランドと殺人鬼ボブのような二重人格が発生する。

今までは善クーパーが元のクーパーで悪クーパーがもう一つの別人格と考えていたが、善だけでも元のクーパーではなく、悪だけでも元のクーパーではない。その二つが融合しその葛藤状態におかれることで真のデイル・クーパーが復活するのではないか?

 

そんな大層な抽象概念の話とは別にツイン・ピークス町内では等身大の出来事が起きている。

 

ノーマのダイナーにビジネスマンらしき男がやってくる。この男は今や本店も含め5店舗へ事業を拡大しているノーマのダイナーを統括するマネージャーらしい。

全体で見ると売り上げはとても好調だが、ノーマ本人が経営する本店は赤字らしい。そこで何が問題か計算したところ、チェリーパイがコストが高い割りに利益が少なく、採算が合わないと告げられる。

しかしノーマは断固として反対する。チェリーパイは彼女のこだわりの一品であり、その味に誇りを持っている。丹精と愛を込めてチェリーパイを作っている。

だが、その丹精や愛はお金にはならない。ビジネスで考えれば、味は落ちても利益が出る方がいい。

 

この話は本筋とは全く関係してこないと思うが、なぜか心に残った。そして、このノーマと創造主であるデヴィッド・リンチ自身を重ねてしまった

リンチのフィルモグラフィは芸術と商業主義の戦いの歴史とも言える。自分が本当に作りたい、こだわりの作品と世間にウケる作品の狭間に最も苦しんだ映画作家と言っていいかもしれない。キャリア初期の『デューン』での失敗や、この『ツイン・ピークス』もその軋轢は大きかったはずだ。だからこそ、『The Return』は全て自身で制御し、自由に作るという条件の元、25年越しの続編となり得た。

ノーマがチェリーパイにかける情熱と、リンチが作品にかける情熱は同じのように感じ、不思議と心に残るシーンだった。

 

後半付近ではまたもオードリーとその小さい夫チャーリーが登場

またもよくわからない会話をしている

ただ、今回は前回とはまたちょっと様相が違う。オードリーは不意に「自分が自分ではない気がする」と言い始める。この『ツイン・ピークス』ではよく起こるシチュエーションではあるが、その大抵の場合は何者かに取り憑かれて操られている。25年前にオードリーが銀行の爆破事件に巻き込まれている件も気に掛かる

さらに不思議なセリフが。ロードハウスへ目下捜索中のビリーを探しにいくオードリーに対し、夫のチャーリーは「ゲームを終わらせないと君の物語も終わらせるぞ」と発言。それに対しオードリーは「通り沿いに住んでた少女の物語のこと?」

通り沿いに住んでいた少女とはローラ・パーマーに間違いない。そしてその物語とは今見ている『ツイン・ピークス』だろう。

 

なぜ急にオードリーはそんなメタな発言をし始めたのか?

そもそもこのオードリーとチャーリーはずっと同じ部屋にいるが、ここは現世か?

そして、なぜそんな超然的な視点をオードリーが持っているのか

一気によくわからなくなってきた

 

 

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