ツイン・ピークス生活 4日目 『第3章』ローラの葬式と秘密結社ブック・ハウス・ボーイズ
ツイン・ピークス生活 4日目
『第3章』
〈ネタバレを含みます〉
昨日の記録↓
いよいよ昨日からデヴィッド・リンチ色が強まり、とうとう本性を現しはじめた『ツイン・ピークス』。シーズン1はパイロット版含め8話ということで、ここで折り返し地点。果たして、あと4話で話が一段落するのだろうか?
折り返し地点ということもあってか、本日は町の人々が一堂に会すイベント、ローラのお葬式がある。町の人々がそれぞれ準備して、お葬式に向かう様が描かれる。
そのお葬式前に、昨日見た変な夢を元にパーマーは捜査開始。
まず、ホテルの令嬢オードリーが明らかにクーパーに気がある。そして、何かを知っているのかクーパーにやたら協力的。中でも前日から父ベンジャミンとローラの関係を疑っているようである。その後、瓶に向かって石投げ捜査で捜査線上に挙がったレオに話を聞きに行く。そして昨日、ツイン・ピークスにやってきた法医学のプロフェッショナル、アルバートの高慢不遜な態度で地元住民と一触即発。そこでローラが死ぬ直前、二度腕を縛られており、麻薬常習者であることが発覚する。
そして、お葬式。メイン・キャラクターたちに加え、毎話意味深なイントロダクションをしてくれる丸太を持ったおばさんなど、現段階ではよくわからない人々も結構目立つ所に陣取っている。そこで、ホーン家の長男ジュリーが「アーメン」と絶叫。その後、悪童ボビーも叫び始める。
「この町は偽善に満ちている!ローラを殺したのは、お前らだ!」
この発言がおそらくこの物語のテーマなのだろう。牧歌的な古き良きアメリカの田舎町、しかしそこには裏の顔がある。これこそ、リンチが何度も何度も繰り返し描いていたテーマじゃないか!
またシーズンの折り返し点での大きなイベントでそれを糾弾するのがボビーであるのも感慨深い。浮気に麻薬に暴力にと悪徳行為全部やっているボビーだが、それは軍人で減額なカトリック教徒である父への反抗でもある。それはツイン・ピークスに蔓延る「偽善」と「建前上の正しさ」への当てつけとしての行為ともとれる。そして、それはローラも同じだったのでは…?
古き良きアメリカを愛す親たちVS反抗する子供達。この対立構造とその象徴としてのローラ・パーマーという構図が見えてくる。
一方でもう一つのデヴィッド・リンチ的テーマも着々と見えはじめている。
というのも、やっぱり見れば見るほどクーパー捜査官はデヴィッド・リンチの化身のように思えてくる。昨日は急に出てきたスピリチュアル展開に少々面食らったが、クーパーが語る理論をちゃんと聞いていると、無意識や夢に現れる潜在的な考えを解読する、つまり彼の言う捜査は「夢解き」に近い。これも、根本的にシュルレアリスム的な方法で映画を作っている彼の投影に見える。
そしてこの『ツイン・ピークス』はその無意識に自分を委ねる、シュルレアリスムにおける自動筆記のような物語構築と、先の展開をあえて決めず、物語の流れと視聴者の声を元に次の話を変えていくソープ・オペラ形式のドラマを一致させるというコンセプトがあるように思える。前衛的でありながら、観客にウケる大衆性も担保されているというところが、自分がデヴィッド・リンチの作品から感じる最大の魅力だ。
クーパー捜査官はそう言った作品作りの姿勢に自己言及的な存在と言えるのかも
古き良きアメリカの内側に潜む醜悪な世界という現実社会に即したテーマをツイン・ピークスという町に、無意識・夢から潜在的な世界を巡るというテーマをクーパー捜査官に担わせているのでは?まだ3話目だから、当てずっぽうでしかないが…
話は戻って、お葬式を終えると新しい事実が明かされる。
ハリー保安官やエドら町の男たちは麻薬密売のルートを追っていたという。その中心人物として挙げられたのがバーテンダーをしているジャック・ルソー。こいつもまたJだ。
そして、その男たちは「ブック・ハウス・ボーイズ」という秘密結社を組織しており、先祖代々森の中に潜む怪物?魔物?のようなものと戦っているというのだ。急にラヴクラフトのような世界観になってきた…
いよいよリアリティ・ラインが崩壊し始めたぞ!
果たしてこの魔物が実態があるのか、それとも言葉の綾なのかもよくわからないが、予期せぬ方向に世界が広がっていっていることだけは明らか。
ラスト直前、クーパーが疑惑をかけていたジャコビー医師と対峙。
しかし、彼はまた犯人とは違う事情を抱えているようだ。彼はホーン家の長男ジュリーが心を許している数少ない人物であり、精神科医と思われる。つまり、ローラ・パーマーの精神状態を最も理解しているのは彼なのかもしれない。
既に現実と幻想の境界線は曖昧になってきた
ミステリー部分だけに絞ればもうすぐ解決できそうな気もするが、個人的にはどんどん話が逸れて行く方に期待したい
↓過去の記録↓