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バクラウ 地図から消された村|この映画、気づかぬうちに変身していく

バクラウ 地図から消された村Bacurau

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 いやー、困った困った。

 映画の感想を書こうにも、どうにもこうにも書けない時ってのがある。そういった事例の大半は、面白くもなく、かといってつまらなくもない、要は箸にも棒にもかからない映画を見たケースなのだが、『バクラウ』それには当たらない。文句なしに面白い作品だった。それなのに頭を抱えているのは、その内容についてほとんど全く触れられない案件なせいだ。この作品に関して情報は少なければ少ないほどいい。だから、まだ見ていないのなら一切の情報を入れずに見に行ってしまった方がいい。ただしバイオレンス表現にある程度の耐性があるなら、という条件付きだが。

 

 

 とはいえ、この気持ちを書き記しては起きたいのでこれ以降は予告で提示されている情報までは触れていくことにする。細心の注意は払うが、この先は当局は一切の責任を負わないのでそのつもりで。

 

 

題名の通り、舞台となるのはブラジルのど田舎の村 バクラウ。村の長老だったお婆ちゃんが死んだので、久々に主人公は里帰りしてくる。しかしそれを機に村には異変が起こり始める。

まず副題の通り、地図からバクラウ村が綺麗さっぱり消えてしまう。

続いて、近くの牧場の馬が大量に脱走し、村へと押し寄せる。

さらには、村の周辺で謎の小型未確認飛行物体が目撃される。その見た目はいわゆる空飛ぶ円盤UFO。

そしてダムが堰き止められ断水状態にある村への補水タンクローリーが何者かの襲撃を受ける。

 

 「この映画、こっちのジャンルかと思ってたけど、実はあっちのジャンル映画だったのか!」という驚きは諸刃の剣だ。そのサプライズが功を奏すこともあれば、単純に「見たかったのと違う…」とガッカリしてしまうことも多い。その点『バクラウ』は良い意味で期待を裏切ってくれる。一般的な作品はそれでも十分満足なのだが、『バクラウ』の恐ろしさはその先にある。この映画、その瞬間が3、4度訪れる

見てる間は「こっちかと思っていたら、あっちだったと思っていたら、そっちだと思いきや、どっちなんだ、これは!?」と振り回されに振り回される。それだけ目まぐるしいと嫌気もさしそうな所、さらに恐ろしいことにその周到に仕組まれた期待の裏切りにより、どんどんと面白さは加速していく。見る前のイメージからは想像もつかないほど、用意周到に罠が至る所に仕組まれていた。天晴れの一言だ。

 

 序盤こそ村の各所で静かに不可解な現象が起きていく『未知との遭遇』のようなムードが展開されるが、これが『バクラウ』の第一形態でしかない。ここからどんどんと物語は変身を重ね、予想だにしていなかった域まで連れて行かれることになる。

 しかし個人的にこの作品の最大の凄さまじさは物語がどんどんと変貌してはいくものの、どんでん返しは一つもないところにあると思っている。その変身は気づかないほどシームレスに行われていて、その変身の片鱗は序盤からたしかにあったものだったと後から気付く。実はその変身は物語が始まった瞬間にはもう始まっていて、それに観客がそこで気づいたというだけのことでしかない。この「どんでん返しの不在」という感覚が、見ていて感じたことのない新鮮さだった。

 

 もしかすると、カンヌの審査員賞という肩書きのせいで、お堅い映画だと思われているかもしれないがとんでもない!たしかに現代の寓話として色々なテーマを読み取ることもできる。だがその前に、まずは抜群に面白く、よくできている映画だ。お堅い論考は見終わってからの二の次でいいと思う。

 歯に物の挟まったような物言いしかできないのは辛いが、用意周到に練り込まれた作品という点では年末にして今年トップ級と言っていい。下手に情報が入る前に見てしまうのを切におすすめする。

 ただし最後に改めて、バイオレンス表現が大丈夫な人であれば、というのは繰り返しておく。苦手ならば心臓に悪い。

 

 

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