ツイン・ピークス生活 31日目『ローラ・パーマー最期の7日間』そりゃ当然、黒がいるなら白もいるでしょ
ツイン・ピークス生活 31日目
『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最後の7日間』
〈ネタバレを含みます〉
↓前日の記録↓
ツイン・ピークス全30話を見終え、謎は依然として謎のまま。
そこで制作されたのがこの劇場版。ということで見た。
リアルタイムで見ていた人があの終わり方にどう感じたのかは気になるところではあったが、そのモヤモヤを抱えたままでついに出た劇場版!としてこれを見せられた時の感情もどんなだったんだ…
「あの終わり方はなんだったんだろう…」「ブラック・ロッジってのは結局なんだったんだろう…」とその答えを求めて見に行った人は答えどころか、さらに輪をかけて複雑になった謎を持ち帰ることになる…
大筋は題名通り、全ての因果の中心にいたローラ・パーマーが死ぬ直前までが描かれる。つまり、第一話の直前までになにが起こっていたのかを見れる。
正直、このローラの死の直前の行動というのは作中で既に大方明かされているので答え合わせをするだけではある。ここでこの人に会って、ここでこのヒントを残して…などで、そこまで新しい情報はない。
しかも、このローラの足跡ってのはドラマが進んでいく中で、書き手が都合よく新しい痕跡を付け足していったので実際にローラ・パーマーの物語として見せられると彼女の言動や感情の流れがどれだけ支離滅裂だったかよくわかる
『ツイン・ピークス』の最大の面白さはその継ぎ足し継ぎ足しで物語を進めていく部分だと思うので、この支離滅裂さが面白かった証拠ではあるのだけれど、改めて見せられるとそこが粗に見えるようになってちょっと冷めた…
だから、やっぱりローラの最期の足跡はドラマで語られているだけで良かった気がする…
よく考えると、ローラ・パーマーはツイン・ピークスで常に話題の中心でありながら、視聴者は一度も会ったことがない人ではある(夢の中では会った)
でも演じているシェリル・リーとはローラに瓜二つの従姉妹マディとして会っているし、やはり二時間の劇映画としてもたせるにはシェリル・リーははっきりと実力不足かな…結構、見ていて辛いところがあった
反対に、本編でもキレッキレの演技を見せていた父親リーランド役のレイ・ワイズは見ている側も既に彼が殺人鬼ボブの住処になっていることは知っているのでいきなりフルスロットルが見れて嬉しい。
キャストで言えば、お馴染みの人たちが出てきている一方で出てこない人がいるのが悲しい…
オードリー役のシェリリン・フェンが登場しないのは悲しい。ただ、結果的にオードリーをはじめとしたホーン家の人々はローラの死には直接は関係していなかったので、そもそも出てこない。ちょっとくらい顔は見せて欲しかったが、そこまで話に影響はない
はっきりと問題なのは、ローラの親友ドナ役のララ・フリン・ボイルの降板だ。
ドナはローラに最も近しい存在なので、登場しないわけにはいかない。そこで代役でモイラ・ケリーが演じているが30話にも及んで見てきた人が知らない人になっているというのは違和感でしかない。売れちゃって出られなかったのかな…
他は全員なじみの顔な分、この違和感はとてつもなく大きい
こんな調子で終始、新規映像だけのはずなのに総集編を見せられている気分ではあった
こっからは新しい情報の部分だ。
ローラの死の顛末を描く前に冒頭30分くらいかけて、もう一つの事件が描かれる
ローラ殺人事件の一年前に起こった、テレサ・バンクス殺人事件だ。
このパートの中で新キャストのキーファー・サザーランドやデヴィッド・ボウイが顔を見せる。
このテレサ・バンクスという名前はちらほら本編でも出てきたが、何者なのかがはっきりと示された。この事件はツイン・ピークスとは全く別の田舎町で起こっているが、テレサはローラとロネットと共に片目のジャックで働いていた。
そして出張中だったリーランド=殺人鬼ボブと関係を持ち、結果的に死に至ったという事件だ。つまり、経緯はほぼローラとロネットと同じだ。
だが、そこにはっきりとブラック・ロッジの面々が絡んでいる。
この事件の捜査のためFBIから派遣されたデズモンド捜査官はブラック・ロッジへと呑み込まれてしまう、そこでデスモンドを手動するのが、シーズン2の序盤で登場したおばあさんとデヴィッド・リンチ似の少年だ。彼らもやはりブラック・ロッジの住人だったのか…彼らは後にローラの元にも姿を現す。
このデズモンドの失踪を追跡調査したクーパーは後に起こる事件を予感していた。つまり、この段階からクーパーもツイン・ピークスへと引き寄せられていたとわかる。
そしてデヴィッド・ボウイの登場が最も衝撃的だった
長い間失踪していたデヴィッド・ボウイがFBIの本部に急に現れ、急に消える。
どこに行っていたか問うと、ブラック・ロッジの集会に立ち会っていたらしい
アールとデヴィッド・ボウイ、デズモンドとクーパー。FBI捜査官たちがどんどんとブラック・ロッジへと吸い込まれていく。
なぜFBIが対ブラック・ロッジ機関みたいになっているのか
そこの集会で現れた面々も見たことある顔ばかり
殺人鬼ボブとちっさいおっさん、例の婆さんと孫、あと謎のピエロなどもいた
こいつらが悪の元凶なのか…。どうやって退治すりゃいいんだ…
そしてクライマックスにも興味深い点が。今まで気にしたことはなかったが、ローラが殺された時に同じ状況にいたロネットはなぜ生還できたのだろうという謎だ。
ブラック・ロッジの人柱にならなかったために、ローラは殺されることになるが、対してロネットには正反対の力が発生する。
今まで概念としては登場していたものの、全くもって手がかりがなかった「ホワイト・ロッジ」。そこの住人と思われる天使がロネットの元に降臨する。
なぜロネットの元に降りたのかは謎だが、もう一つの世界がここに来て明かされた
そしてラストシーン
例の赤い部屋に座るローラとその側に立つクーパー。
二人の視線の先にはまたもホワイト・ロッジの天使がいる。
それを見て、ローラは涙を流す
このシーンが映像としても、シェリル・リーの演技も本当に美しい!
赤い部屋に魂だけ幽閉されている状態のローラとクーパーにとって、それを救い出せるのはホワイト・ロッジの力なのかもしれない。
2020年の今から見ればやがて続編が作られると知っているからいいが、当時の続きも出ない状況でここで終わられるってどういう気持ちなんだよ
黒と白の対決、クーパーとローラの行末、その他もろもろ気になることが山ほどあるじゃないか
それもこれも、きっと25年越しで明かされるんだろう
いよいよ、次からリミテッド・シリーズに入ります
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